「一番選ばれるブランド」と「一番人におすすめしたいブランド」が一致したのは、17カテゴリ中4つだけ

「推し」という言葉がすっかり日常的になり、ファンの熱量が推奨やクチコミといったUGCを生む時代になりました。ところが、従来のアンケート調査でわかるのは「どれくらいの人がブランドを選択しているのか」という人気の広さであり「ブランド選択者のどれくらいが、布教したいと思っているのか」については見えないままでした。

そして昨今、生活者の時間を大きく伸ばしているのがライブ配信です。国内ライブ配信の総視聴時間は2020年から2025年の期間で4.7倍に成長(※1)。なかでもゲーム実況は配信の中心ジャンルで、世界最大級のライブ配信サービス「Twitch」の日本での総視聴時間も、2024年に前年比17%増を記録しました(※2)。

この成長の中心にいるゲーム配信の視聴者たちは、従来のアンケート調査ではなかなか声を拾えない、企業からの「見えない層」になりがちです。

そこで、GLOEと配信技研は『SCOP』の機能の一つである『SCOP Survey』を活用し、コンビニやハンバーガーなど身近な17カテゴリ・229ブランドを対象に「推しに関する調査」を実施しました。


※1 出典:配信技研「国内ライブ配信 総視聴時間」(CEDEC2025発表)
※2 出典:Twitch Japan公式発表(2025年4月)

SCOPとは?

本調査記事は『SCOP』を活用して、集計しています。

『SCOP』とはライブ配信プラットフォームを活用し、ストリーマーを活用したプロモーションの実行から効果測定までを一貫して提供する広告配信サービスです。従来では、ストリーマーを活用したプロモーションを実施する際に人手に頼らざるを得なかった工程を仕組み化し、デジタル広告のような形でストリーマーを活用したプロモーションを提供しています。2025年11月のローンチから20以上のブランドがSCOPを通じ、広告を配信しています。

▼『SCOP』の資料ダウンロードは以下よりお申し込みいただけます。
https://media.gloe.jp/download/scop-service/

指標の定義

推し数:「あなたにとって一番『推し』に近いブランドを1つ選んでください」において、ブランドが選択された数。人気の規模を表す指標です。

布教熱:直後に、そのブランドとの関係を7段階で質問し、「6:好きで、身近な人にすすめることがある」「7:知人やオンラインで積極的にすすめたい/布教したい」を選んだ人の割合。布教者としての熱の高さを表す指標です。

布教熱の算出と順位比較は有効回答100件以上のブランドのみを対象としています。

1. 好んでいるブランドと人に布教したいブランドは異なる

まず、17カテゴリすべての「推し数1位」と「布教熱1位」を突き合わせた全結果がこちらです。

カテゴリ

推し数1位

布教熱1位(括弧内は推し数順位)

一致

コンビニエンスストア

セブンイレブン

セブンイレブン(1位)

○

ハンバーガーチェーン

マクドナルド

バーガーキング(2位)

×

ファミリーレストラン

サイゼリヤ

びっくりドンキー(3位)

×

丼・定食チェーン

すき家

なか卯(8位)

×

焼肉チェーン

牛角

叙々苑(3位)

×

ラーメン

一蘭

ラーメン山岡家(3位)

×

宅配ピザ

ドミノ・ピザ

ピザハット(2位)

×

回転寿司チェーン

スシロー

魚べい(4位)

×

エナジードリンク

モンスターエナジー

モンスターエナジー(1位)

○

無糖茶/お茶

綾鷹

健康ミネラルむぎ茶(3位)

×

ミネラルウォーター/天然水

い・ろ・は・す

サントリー天然水(2位)

×

炭酸飲料

コカ・コーラ

ドクターペッパー(2位)

×

グミ

果汁グミ

HARIBO(4位)

×

チョコレート

たけのこの里

たけのこの里(1位)

○

アイスクリーム

ハーゲンダッツ

PARM(5位)

×

カップ麺

カップヌードル

蒙古タンメン中本(7位)

×

カフェ/ティースタンド

スターバックス

スターバックス(1位)

○

「推し数」と「布教熱」の1位を突き合わせたところ(※3)、「推し数」と「布教熱」が一致したのは17の商品カテゴリのうち、セブンイレブン、モンスターエナジー、たけのこの里、スターバックスの4カテゴリのみに留まりました。残る13カテゴリでは、「最も選ばれるブランド」と「布教したいブランド」は異なっていました。

さらに、11カテゴリにおいては推し数1位ブランドにもかかわらず、布教熱においては下位に沈み、5カテゴリ(ハンバーガーチェーン、丼・定食チェーン、焼肉チェーン、宅配ピザ、グミ)では布教熱は最下位となりました。

ねじれの大きさを象徴する例を3つ挙げます。

ハンバーガー:推し数1位のマクドナルドの布教熱は8.1%。一方、2位のバーガーキングの布教熱は30.9%と約3.8倍となりました。

カップ麺:カップ麺カテゴリでは、推し数で7位の蒙古タンメン中本が布教熱25.6%で、一位となりました。

炭酸飲料:推し数1位のコカ・コーラに対し、ドクターペッパーが布教熱29.5%となり、一位となりました。


※3 有効回答は、ブランド選択設問で「リストにない/わからない」以外を選択し、かつ態度設問で1〜7点のいずれかを回答したものです。布教熱の算出および順位比較は、有効回答100件以上のブランドを対象としています。

2. 「人におすすめしたい」という熱は、上位10%の布教者から生産されている

全29,150件の有効回答のうち、「人にすすめたい・広めたい」(7段階中6・7点)という強い推奨態度が示されたのは3,603回答、わずか12.4%でした。さらに回答者の52.3%は、17カテゴリを通して一度も6・7点を選んでいません。日常的にブランドを選んではいても、「人に推奨したい」とまで思うことは、多くの人にとって当たり前ではないと考えられます。

さらに、強い推奨回答の54.7%は、回答者全体の上位10%(219人)に集中していたのです。この219人は17カテゴリ中平均9カテゴリで「すすめたい」と回答しており、特定ブランドの強烈な体験でファンになったというより、好きになったものを人に広めずにいられない「布教者」タイプの生活者だと考えられます。

なお、この集中には「どの質問にも高い点を付けやすい」という回答傾向の影響が混ざっている可能性は残ります。それでも、回答者の過半が17カテゴリを通じて一度も6・7点を選んでいないという事実は、「人にすすめたい」が多くの人にとって例外的な態度であることを示すには十分だと考えられます。

3. フィジカルアベイラビリティがつくるのは「ブランド選択」であって「布教したい」ではない

地域ごとに見ると、地元チェーンの「推し数」は発祥の地で圧倒的に高まります。たとえば北海道のセイコーマート(コンビニチェーン)は、札幌エリアからの推し数シェアが40.0%に達する一方、その他のエリアでは2.6%と、約15倍の差がありました。

九州で人気の高いジョイフル(ファミリーレストラン)も、福岡エリアからの推し数シェアが47.3%に対し、他地域では3.9%という結果となり、店舗がある生活圏でしか、ブランドは「日常的に選択されない」ことが表れています。

ところが「布教熱」はまったく違う動きを見せました。エリア×ブランドの227通りの組み合わせを統計的に検証したところ、偶然の範囲を超える地域差はひとつも見つかりませんでした。

象徴的なのがセイコーマートです。道外には店舗がほとんど無いにもかかわらず、札幌以外のエリアの回答者からの布教熱は34.0%と、札幌エリアの回答者(30.6%)と同水準以上。毎日通える人と、旅行でしか行けない人とで、「人にすすめたい」という熱の濃さは変わらなかったのです。

昨今のマーケティング研究では、ブランドが選ばれる重要な要因として、思い出してもらえること(メンタルアベイラビリティ)と、買いやすいこと(フィジカルアベイラビリティ)が存在すると考えられています。

店舗数の多さはフィジカルアベイラビリティにあたり、ブランド成長の強力なドライバーであることは間違いありません。しかし、今回のデータが示すのは、フィジカルアベイラビリティが増やせるのは「日常的に選択される回数」であって、「推奨したい」という熱ではないということです。

ただし、利用したことがないブランドを人が推しに選ぶことはないので、「布教熱は体験と無関係」という意味ではありません。

道外からセイコーマートを推しに選んだ人も、旅行や帰省のタイミングでお店を体験しています。しかも、道外から推しに選んでいる人々はめったに行けないセイコーマートをあえて選んだ人たちです。つまり、店舗が少ない土地でセイコーマートを推す人は、本気で好きな人だけと考えられます。道外の布教熱が高く出るのは、その表れだと考えられます。

日常生活で手に入りやすいことは、ブランドの選択回数を増やします。しかし、布教行動につながるのは接触の頻度そのものではなく、その体験がどんな文脈で生まれたのか、という要因が大きいのではないでしょうか。

例えば、東京に住んでいる人が友人にする「北海道に行くなら、東京にはないからセイコーマートにも寄った方がいいよ」という推奨は、毎日通えることからは生まれません。旅行先での体験の記憶と「東京にはない」という文脈から生まれていると考えられます。

この事象から、少なくともフィジカルアベイラビリティが高くなくても、ブランドの布教者は存在するということは言えそうです。

布教熱をどうとらえるべきか

ここまでの発見を、実証研究の知見と突き合わせて整理します。

「ブランドを選択する」と「ブランドを推奨したい」は別物

ブランド研究にはダブルジョパディの法則という有名な実証法則があります。市場シェアの小さいブランドは顧客数が少ないだけでなく、ロイヤルティ(購買頻度やリピート率といった行動指標)も「やや」低くなる。つまり「小さいブランドは二重に苦しむ」という法則です。1960年代以降、国・カテゴリを問わず繰り返し確認されてきました(※4)。

今回の「推し数」はまさにブランドの規模側の指標であり、セブンイレブンやマクドナルドが「推し数」で1位に立つのは、この法則に則っていると考えられます。

では、布教熱はどうでしょうか。

ここで正確に踏まえておきたいのは、ダブルジョパディは購買行動だけでなく、好意度や購入意向といった態度指標にも同じパターンで及ぶことが知られている、という点です(※5)。「人は自分が使っているブランドをよく語り、好意的に評価する」ため、教科書どおりなら規模の大きいブランドは態度のスコアでも小さいブランドと同等か「やや」高く出るはずです。(だからこそ、実証研究の世界では、シェアの異なるブランドの態度スコアを規模の影響を無視して単純比較してはいけない、とされています。)

ところが今回観測されたのは、その予測とは異なる結果でした。同じカテゴリのブランド間で布教熱には約4.0倍の開きがある例もあり、規模最大のブランドが布教熱で下位に沈むケースが13カテゴリ中11もありました。「ブランドを選択すること」が法則どおり規模の順に並ぶ一方で、「推奨したい」だけは規模に従わなかったのです。

ただし、これは「大きいブランドには布教熱がない」というわけではありません。

布教熱は「そのブランドを推しに選んだ人」を分母にした指標のため、巨大ブランドの分母には、「近いから」「無難だから」という消極的な選択者が多く混ざります。

一方、1番手を差し置いてわざわざ2番手や3番手を推した人は、最初から能動的に好きな人だけに絞り込まれています。この食い違いは回答者構成の違い(自己選択効果)で説明できる可能性があり、その意味で本調査はダブルジョパディの法則を否定するものではありません。

それでも、規模に従う推し数と、規模に従わない布教熱とでは、指標として別物であることは確かです。布教熱は人気ランキングやロイヤルティ指標を集めても代替できない、独立した指標だといえます。


※4 出典:Byron Sharp(2010)『How Brands Grow』Oxford University Press(邦訳『ブランディングの科学』朝日新聞出版)

※5 出典:Byron Sharp(2010)前掲書

布教熱はKPIにはならない

購入意向や推奨意向(NPSなど)といった態度指標は過去の利用経験の結果であり、将来の成長の先行指標としては弱いことが実証されています。売上の分散説明率は、態度指標の8.4%に対し過去の購買習慣が46.8%という研究もあります(※6)。

同じ人に、同じ内容で態度に関する質問を2回すると半分近くが答えを変える、という測定上の不安定さも知られており、本調査でも、布教熱を「将来の売上を予測する指標」として扱うことに関しては難しいと考えます。布教熱は目標数値ではなく、クチコミの発信源がどこにいるかを特定するために使用するのがよいでしょう。


※6 出典:Srinivasan et al.(2010)"Mind-set metrics in market response models: An integrative approach," Journal of Marketing Research

布教者の価値はメディアになりえること

ブランドの売上規模を支えるのは熱狂的なファンではなく「広く浅い」多数のライトユーザーであり、成長のメインドライバーは浸透率(顧客数)の拡大です(※7)。事業成長の伸びしろの約90%はノンユーザーとライトユーザーにあるという推計もあります(※8)。

前提として、この原則は今回の調査からも揺らぐことはありません。

なぜなら「熱狂的なファンが売上の柱になる」とは言えないからです。 有名な例では、熱狂的ブランドの代名詞とされるハーレーダビッドソンでも、最も熱狂的なファン層の売上貢献は約3.5%に過ぎませんでした(※9)。今回の布教者(上位10%)も、売上という指標から捉えればわずかな影響しかないでしょう。

今回の調査では、布教者タイプの生活者は回答者の1割程度にとどまることがわかりました。つまり、彼らを発見し彼らの「推奨したい」を、まだブランドを知らないノンユーザーやライトユーザーに届ける仕組みを作ることができれば、浸透率の向上に寄与すると考えられます。


※7 出典:Byron Sharp(2010)前掲書、およびBinet & Field(2018)『Effectiveness in Context』IPA

※8 出典:Trinh et al.(2023)"Where is the brand growth potential? An examination of buyer groups," Marketing Letters

※9 出典:Byron Sharp(2010)前掲書

今後の展望

昨今のマーケティング研究では、ブランドの成長は新規顧客へのリーチに影響されることが繰り返し確認されています。だからこそ、布教者の熱量を、ブランドを知らない人・思い出さない人に届けるメディアを持つことが、これからのブランドコミュニケーションの分かれ目になります。

ゲーム配信は、ストリーマーと視聴者の距離感が近いコミュニティです。GLOEと配信技研は今後も『SCOP』を通じ、ゲーム配信がマーケティングにおいてどのような役割になれるのかを研究し、ブランドと生活者の新しい接点づくりを支援してまいります。

SCOPについて

GLOE株式会社の子会社である配信技術研究所ではSCOPという中堅・若手のストリーマー(ゲーム配信者)の一括運用を可能にしたソリューションを提供しています。

ひとりひとりの配信規模が小さくても複数人を束ねることで、Z世代・α世代に広く深くリーチできる広告メディアとなっています。GLOEが販売代理店をつとめておりますので、ご興味のある方は以下から資料をダウンロードいただけますのでご活用ください。

▼『SCOP』の資料請求フォーム

https://media.gloe.jp/download/scop-service/

集計・統計処理に関する注記

調査結果1

集計対象は「有効回答」=設問Aで「リストにない/わからない」以外のブランドを選択し、かつ設問Bで1〜7点のいずれかを回答したもの(全カテゴリ合計29,150回答)。推し数=カテゴリ内の有効回答におけるブランドの選択数。布教熱=ブランドごとの有効回答に占める6・7点の割合。1位の突き合わせにおいて、布教熱の算出および順位比較は、割合が少数の回答に偶然左右されることを避けるため有効回答100件以上のブランドを対象に行っています(推し数の順位は全ブランドが対象)。

調査結果2

回答者(2,194名)ごとに、17カテゴリのうち6・7点を選択した回答数を集計し、その多い順に回答者を並べたうえで、上位10%(219名)の布教回答数が全布教回答(3,603件)に占める割合を算出しています(パレート分析)。

調査結果3

全8エリア(札幌/仙台/東京/名古屋/大阪/広島/福岡/海外)を対象に、ブランド×エリアの組み合わせのうち、当該エリア・その他エリアの有効回答がともに30件以上となる227組について、布教熱(6・7点選択率)の差を二項比率の差のz検定(両側)で検証し、多重比較はBonferroni法により補正(有意水準5%)して判定しています。補正後に統計的に有意なエリア差は0件でした。また、補正前にp<0.05となった組は11件(全体の4.8%)と偶然に期待される水準(5%)と同程度であり、227組の布教熱の差は中央値3.5ポイントと小さいものでした。同検定をFisherの正確検定に置き換えても結論は同一です。なお、エリア別の推し数シェア(約15倍等)は、各エリアの回答者によるカテゴリ内有効回答に占める当該ブランドの選択率を比較したものです。

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ゲーム・eスポーツに関連する様々な事業を展開するGAMING LIFESTYLE Company

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